井上かなえの「どこにでもいる普通のオバチャンの話」6 レシピ-牛肉とほうれん草のクリームチーズ和え
- よみふぁみ限定
- 2025/02/25井上かなえ
料理研究家の井上かなえさんが50代女性の日常をつづるユーモアたっぷりのコラム。
日々の買い物や美容の話、ごみ捨ての時に毎回合う人の話などなど……、
クスッと笑えて共感できるお話をお届けします。
❁ ❁ ❁
わが家の子どもたち3人は、上の二人、長男と長女は既に社会人になっていて、現在二人ともそれぞれ大阪、京都で一人暮らしをしている。
長女が一人暮らしを始めてこの春で丸2年になるが、毎日朝は簡単な朝食を済ませてから慌ただしく出社、昼は自分で作った弁当を食べ、夜遅くまで働いたあとは誰も居ない、電気も付いていない、寒い一人暮らしのマンションへ帰っていく。(想像するだけで寂しい)毎晩、仕事帰りの電車の中から、
「今から帰りますー」
とLINEが来るのだが、この時必ず、
「今日は何食べるの?」
と返信するわたし。
一人暮らしも2年を経てようやく自炊にも慣れつつある長女は、冷凍のご飯をチンしたり、冷蔵庫にある肉を炒めたり、わたしがコストコで大量買いして差し入れした必殺お湯を注ぐだけのお味噌汁などを駆使して晩ごはんを作り、今日もちゃんと食べますと聞いて、わたしはほっと一安心する。
一人暮らし歴は長女より半年ほどだけ長い長男の方だが、息子の方はといえば、娘ほどは連絡がマメではない。「男の子はみんなそんなもんよ」と周りの友達も口をそろえて言うのだが、奴ら男子はこちらから連絡せずにいると、平気で数か月もの間、ヘタすると半年近く一切の連絡がない。いったいどこで何をしているのか!(一人でちゃんと働いて日々暮らしています)
便りがないのは元気な証拠、と頭では分かってはいるものの、なんせ生きているのかすらわからないアイツ。
あまりにもしばらく連絡が無いため、たまらず唯一現在実家暮らしをしている次女にこっそり、
「兄さんに『最近食べたご飯の写真を送りなさい』ってLINEしてみて」
などと次女というスパイを使って強制的に連絡をさせ、奴の生存確認を秘密裏に行っている。そして妹からのLINEにちゃんと写真付きで最近食べたものを送ってくれる優しい兄さん。(もっとちゃんと自分から連絡せえよ!)
離れて暮らす長男、長女の何が気になるって、
「ちゃんとごはんを食べているか」
という問題なわけだが、(もはやそれしか聞いていないわたし)一方の夫の方はといえば、LINEでマメに彼らと連絡を取り合うでもなく、子どもたちのことはな~んにも心配していないように見えるが、
実は彼らに、わが家で食べていた時と同じ銘柄の米がそれぞれの一人暮らしのマンションへ定期的に届くように手配している。(笑)
この春からはいよいよわが家に残っている唯一の子どもであったわたしの手先、次女までもが一人暮らしを始める。(かもしれない。まだ勤務地が決まっていないけど多分)
春からはわたしはきっと次女にも、
「ごはんちゃんと食べた?」
「今日は何食べたの?」
と毎日LINEするのであろう。
米はずいぶん値上がりしてしまったので、一旦子どもたちに送るのは全員無しにしてもらってもいいですか。🍙
❁ ❁ ❁
今月のレシピ 牛肉とほうれん草のクリームチーズ和え
【材料】2~3人分
牛切り落とし肉…200g
チヂミホウレン草(またはホウレン草)…1束
クミン…小さじ ½
塩、コショウ…少々
オリーブオイル…大さじ1
だし醤油(または醤油)…小さじ2
クリームチーズ(個包装のもの)…1~2個
【作り方】
❶ ホウレン草は根元に十字に切り込みを入れてよく洗い、たっぷりの湯に塩少々を入れて1分ほどゆでる。冷水にとって冷やし、水気をしぼって4㎝長さに切る。
❷ フライパンにオリーブオイルとクミンを入れて中火にかける。香りが立ってきたら牛肉を入れて色が変わるまでさっと炒め、塩、コショウを振って火を止める。
❸ ボウルに❶のホウレン草をもう一度絞って入れ、❷の肉を入れてだし醤油(または醤油でも)を入れて和える。
❹ 器に盛り、クリームチーズをちぎって散らす。
※クミンの代わりにみじん切りにしたニンニクでも美味しくできます
井上かなえプロフィル
料理研究家。野菜ソムリエ。忙しくても手早く作れてきちんと美味しいレシピが支持されている
毎日の家ごはんやレシピを紹介するブログ「母ちゃんちの晩御飯と
NHKきょうの料理出演や、おせち料理の監修、企業のメニュー
著書に「はじめての自炊練習帖」(ダイヤモンド社)、「野菜たっ