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Column

料理&コラム

井上かなえ(かな姐)さんの連載コラム

【再び二人になるときがくる!?】現在編

子育てに全く関与しなかった夫だが、子育てがひと段落した現在も夫はほとんど変わることはなかった。
妻は眉間にしわを寄せるのをとうの昔にやめ、夫には一切何も期待しなくなった。最初からやらないものと思っていれば「何故やってくれないの!」と傷つくこともない。
平日は朝から深夜までせっせと働き、休みの日にはゆっくり昼まで寝るし(その曜日がごみの日だとしてもね)、ジム通い、スキューバーダイビング、ドラム、釣り、ライブ鑑賞、ドローン空撮←newなどますます趣味三昧の夫。
家のことは全く興味がないのか、自分からはやろうとしない。
ひとたびテレビに集中すると話しかけても聞こえないし、周りも見えなくなるらしいので、わたしがせっせと台所に立ったり、ベランダで窓ふきなどをしていたりしても全く気が付かない。気付けよ! と心の中で毒づきながら足音をわざと立てても。聞こえないし見えない。

そもそも夫は、我が家の各種ごみの日が何曜日なのかも知らないし、段ボールのごみを潰して紐で縛ってごみ置き場に運ぶことも、家の中に回収すべきごみ箱が何箇所あるのかも知らない、洗濯機の使い方も知らない、洗剤の置き場も柔軟剤をどのくらい入れるのかも、皿洗いもやったことがないので自分が使用した食器は流しで山になったまま次から次へと新しいコップを出す、
「俺だってチャーハンぐらいは作れるわ!」と豪語する割には結婚して30年弱、ただの一度も作ってもらった試しもない、朝の自分のトーストを焼くことすらしない。
まあ料理に関してはわたしの仕事柄、素人は手を出しにくいのであろうという気持ちもあるので大目に見るが、
そのほか、男の人が役割であることが多いであろうベランダ掃除、電球の取り換え、網戸の張替え作業、大きな家具の移動、年末の大掃除などなど、これらもすべてはわたしだけの仕事である。

ここまで書いて、わたしはとあることに気が付いた。
夫ができないこと、いやほかのご家庭の夫には出来てうちの夫だけができないことを細かく挙げていけば挙げていくほど、わたし自身の精神状態がどんどん落ち込んでいくことに。
なんとも悲しく、やりきれない気持ちになる。
コラムを書き始めた2か月前、なんとなく勢いで書き始めたのはいいものの、結局3回シリーズのこのコラムの着地点はどこにあるのだろうと考えると、幸せな結末がどうしても想像できなくて、もしかして振り返ってみれば自分の人生は失敗だったのではないだろうかとついあらぬ方向へ考え始める始末。
熟年離婚に至った体験マンガなどを読んでは、そこに出てくる家事育児を全くせず妻から無言で三下り半を突き付けられた夫(夫は全くの無自覚で)はまるで我が家の将来のようだと落ち込む。
違う。そっちにはわたしだって進めたくないはずだ。
よし、これ以上は夫の悪いところ探しはやめよう。離婚に至った体験談を読むのは止めよう!

夫の良いところを挙げてみようではないか。
夫は、わたしに言われなくても出来ることも少しはあるのだ(たまに思い出した時に趣味程度に、だが)。
まず、たま~にトイレ掃除をする。
たま~にお風呂掃除もしているようだ、白髪染めの合間が暇だから。
布団も干す。布団を干した後は掃除機もかけられる。奥さんが見て見ぬふりをするので。
(それぞれ三か月に一度程度)
コーヒーなどはこだわりを持って淹れることができるようだ(カップをお湯で温めておく、などわたしが絶対にやらないことをいちいちやっている)。
自分の靴も磨く。これはわたしの分もやってくれるし、なんなら財布やカバンなどの皮製品の手入れもやってくれる、たまにだが。
仕事帰りにケーキやアイス、牛乳やバナナやお菓子など、頼んでもいないのに定期的に買ってきて冷凍庫と冷蔵庫をいっぱいにする。

その・・・くらい・・・だろう・・・か・・・・自ら進んでやれることは。
こう書くと同世代の男性から見るとけっこうやれているように感じるかもしれないが、これらはあくまでも趣味程度にやるだけの話。毎日の日々の生活の中で必ずやってくれていることなど、皆無だ。
しかし夫の「良いところ」探しは、夫の「悪いところ」探しよりもずいぶんと明るく楽しい気持ちになれることが分かった。

夫は趣味をたくさん持っているので、わたしが家で撮影の仕事の時などは一日中文句も言わず機嫌よく出かけていてくれるし、わたしが仕事で何週間も海外へ行った時にも「ぜひ、行っておいで」と大賛成してくれたし、そう考えるとわたしを置いて一人で趣味に没頭してくれるのは大変ありがたいことともいえるのではないだろうか。
夫婦がお互い一人の時間を楽しめるというのはわたしにとってはとても大切なことだ。
四六時中一緒じゃなくても断然いいのはありがたい。
一緒の時間も楽しめるが、一人にもしてくれる。
ご飯を作ることは全くできないが、今日は作れないからご飯を済ませて帰ってきてほしいと夫に伝えたときに、彼が少しでも嫌そうな態度をしたことがあっただろうか?
いや、ない!全くない!
2.3日、いや忙しいときには1週間くらいざらかも、掃除をせずに部屋の中に埃と髪の毛が落ちているときに、夫が掃除をしていないことに対して何か文句を言ったり、不満そうな態度を示したりしたことがあっただろうか? 代わりに掃除をしてくれることはないが、文句も一言も言わないではないか。

一緒に買い物や旅行へ行けば当然荷物はすべて持ってくれるし、取りにくいであろう人気アーティストのライブのチケットも取ってくれ、(わたしは全く興味が無いのに←でも嬉しい)一緒に行こうと誘ってくれる。
娘と行きなよ、と人気のアーティストのライブのチケットも取ってくれるし、最近行きたいミュージカルはないの? とわたし好みの舞台も喜んで取ってくれる気満々だ。全然頼んでないのに。

(ここまで書いてやっと、離婚せずに済みそうなくらいまで気分が軽くなる)
わたしの願いとは、どこにあるのだろう。何が不満なのだろう。
以前に夫に理想の老後について聞いてみたことがあったが、彼が
「海の近くに移住して毎日海に潜り、楽しく遊んで暮らす」
であったことに対し、一方のわたしは
「生涯現役。死ぬまで執筆しながら料理をする」
であったので、そもそも目指している将来の姿がここまで違うのだ。
が、違うからうまくいかないのだろうか? 違っていてもうまくいく方法はあるのではないだろうか?

わたしは自分の中に今ある夫への不満について、さらに細分化し、解析を進めていくことにしてみた。相手に「〇〇してほしい」という要望ではなく、あくまでもこれはわたしたち夫婦が将来お互いに理想的な生活を継続させていくためにあたって、わたしが足りないなと思うところ、わたしがやれることだ。相手を変えることは難しいが自分は変えられる。

【何か夫にやってほしいことがある場合は、前もって伝える。具体的に何日までに、とか次の休みに一緒にやろうなどの声掛けをする】

休みの日にソファーに座り込んでテレビを見ている夫に勝手にイライラし、「暇ならベランダ掃除でもすれば?」などと言っても夫はもしかすると暇ではないかもしれない。暇そうに見えているのはあくまでもわたしの視点だから。暇そうにしているくせに頼んだことをやってくれなかった!ジムには行くくせに!と勝手にイライラして一人で苦々しい思いをするのは損でしかない。

【共通の盛り上がれる話題を探して提供する(今のところ共通の趣味も話題もないので話すことがテレビの内容くらいしかない)】

夫とは読書の趣味も違うし映画の趣味も違うが、お互いに旅行好きであるという共通点がある。コロナ以前は二人で旅行へ出かけたが、そういえばここ2年は行っていなかった。予定を立てることすらせず、お互いに一人旅や母娘旅を楽しむのみであった。これは・・・もしかするとチャンス・・・? 早速プランを立ててプレゼンしてみるか?

次回最終回のコラムでは、これから2か月間でどのようにわたしが行動したか、夫の変化はあったのかどうかについてレポートします。
万が一、全く変化が無かったり、わたしが真面目に課題に向き合わなかったりした場合は、コラムの内容が美味しいカレーの作り方になることをご了承ください。

よみファクッキング
井上かなえ(かな姐)さんのレシピ

◆今月のレシピ

きのことベーコンのゴルゴンゾーラスパゲティ

鮭ときのこのオリーブ蒸し

◆過去のレシピ

ナスとひき肉の和風キーマカレー

豚バラとキュウリの香味野菜合え

もっとレシピを見たい方はコチラ♪

【プロフィール】

料理ブロガー、料理家。兵庫県在住。
2005年にスタートした3人の子どもたちのリアルな日常と日々のごはんを綴ったブログ「母ちゃんちの晩御飯とどたばた日記」はライブドアブログで2018年に殿堂入りし、レジェンドブログに。
「1品1色で!野菜の”カラフル”つくりおき」(NHK出版・ムック)など著書多数。
東京、神戸での料理教室開催、雑誌、TV、食品メーカーのレシピ考案などでも活躍中。

2022/7/25発売の最新刊

1品1色で! 野菜の“カラフル”つくりおき

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NHKのEテレで絶賛放映中
月~木曜の21時55分~22時
(再放送は翌週月~木曜の11時55分~12時)

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