山本ゆりさん連載コラムseason1の第二回目『近所の個人スーパー』
- 読売ファミリー
- 2020/06/24料理&コラム
そのスーパーは駐車場もない個人スーパーで、
ここに引っ越してきて5年、
3店舗目に入れ替わったスーパーだ。
最初に越してきた時にあったスーパーは
私が子どもの頃からあったらしいが、
大手の便利な巨大スーパーが近くにできたことでお店を畳んでしまった。
その次現れたスーパーも1~2年でなくなり、
今のスーパーになった。
このスーパーが、まあすごく良い。
野菜の安さが尋常じゃない。
近所の情報通の友だちによると八百屋が元だとか、
実は八百屋だとか、
八百屋と裏でつながってるとか、
なんかようわからんけど八百屋らしい。
確かに、圧倒的に野菜が安い。
「今日は小松菜が得やで~!買うてってや~!」
威勢のいい声が店先・・・ではなく店の中心から聞こえてくる。
お店の真ん中の四角いスペースにおじさんが1人いて、
周りをズラリと野菜が囲み、
今日のオススメ品を売っているのだ。
ここで「おじさん今日何がおいしいん?」とか聞きながら新鮮な野菜を手に買い物を楽しむ度胸は私にはまだない。
むしろ「トマトどない?」とか直接言われたら断れなくなるから怖くてそのスペースを避け、
お店の周囲の棚に普通に陳列されている野菜コーナーを眺めている。
ほんましょうもないやつである。
ほかのお客さんは「今日はトマトええわ!!ほうれん草は?安ないのん?」とか普通に言うてるし、おじさんも絶対に1ミリたりとも気にしてないのに、
おそらく私が誰かにトマトを勧めて「トマトええわ」とか言われたら少なからずショックやから自分も言えないのだ。
そして真ん中のお得コーナーに一歩踏み込めない事情がもう1つある。
「レタス3玉で100円!レタス3玉!はよ買うてってー」
「今日はブロッコリー3株で98円!」
「タケノコ1盛り200円やでー!」
多いねん。
レタス1玉50円やったら買うけど3玉はいらんねん。
そないシャクシャクできませんねん。
野菜室がレタスで埋まるし、
何より食べきれへんかった時の罪悪感がすごい。
2玉食べて1玉腐らせてしまったとしても値段としては得やけど、
「腐らせた」という罪悪感、
捨てる時のあの「目ぇつぶれる・・・ヒィーごめんなさい・・・」というアレがめちゃくちゃ苦手なのだ。
かといって壁際で売ってる1玉98円のレタスを買うのもくやしい。
それしかなかったら買うくせに、
中心の世界では3玉98円で売ってると思うと損をした気になるという、
人間の汚い心理である。
そして先日、
店先でサンチュ(チシャレタス)が1袋10円で売られていた。
え、どういうことなん。
うまい棒やん。
サンチュを買う予定などまったくなかったし、
なんなら人生で買ったことないけどこれは買うやろ。
今日サンチュデビューやろ。
見渡すとほとんどの人がサンチュをカゴに入れていた。
おそらくみんなサンチュを買う予定などなかったやろうし、
個数制限もないのに1~2袋だけ買っているところに私と同じサンチュデビュー臭を感じる。
そしてその翌日、
サンチュは20円で売られていた。
絶対に昨日の残りである。
昨日10円で思ったより売れたのだろう、
昨日より鮮度が落ちて値段が倍になる、
というわけのわからん事態になっている。
が、20円でもめちゃめちゃ安い。
昨日の10円を知るものからしたら若干悔しいが、
それでも20円て。
一応もう1袋買っとこ。
(昨日のサンチュもまだ未使用なくせに。昨日買えばよかった)
そして最近では、
サンチュ10円の隣に並んでサラダ菜も1袋10円で売られるようになった。
葉野菜市場はどうなっているのか。
どことつながっていたらこんなことになるのか。
10円コンビ。
ということで今冷蔵庫にはサンチュ3袋、
サラダ菜2袋がある。
焼肉でもしよう。
おまけ
プチトマト、
モロヘイヤともに50円。
どうなってるん。
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山本ゆり プロフィール
料理コラムニスト。大阪生まれ&在住。著書「syunkonカフェごはん」シリーズ(宝島社刊)累計約630万部。最新刊「syunkonカフェごはん7 この材料とこの手間で「うそやん」というほどおいしいレシピ」ほか、「syunkonカフェ どこにでもある素材でだれでもできるレシピを一冊にまとめた「作る気になる」本」(扶桑社刊)など。
Twitter:syunkon0507
instagram:yamamoto0507
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