奥田和美(たっきーママ)さん連載コラムseason1-第2回目「ソウルフード」その2
- 読売ファミリー
- 2020/09/25料理&コラム
中学三年生になる頃、家族とともに横浜から大阪に引っ越して来た。
もうかれこれ37年ほど前の話になるが、
当時はまだ関西弁は今ほど全国的に慣れ親しんだ言葉ではなく、
私が知る関西弁と言えば、テレビで見る落語家などが喋る関西弁くらいだった。
「そうでんがな」
「もうかりまっか」
「おおきに」
大阪では誰しもが日常的にそれらの言葉を使うのだろうと思っていたが、
実際大阪に来てみると
「そうですよ」
「調子はどうですか」
「ありがとう」
イントネーションは違えど、意外と普通だった。
でも、やはり当時は今よりも関東と関西の隔たりは大きく、言葉の壁には苦しんだが、
とにかく食べものがおいしいことに衝撃を受けた。
前回のコラムにも書いたが、私は食べることが大好きだ。
まず大阪を好きになったきっかけのひとつはやはり食だったと思う。
大阪は食い倒れの町と言われるだけあって、おいしいものの宝庫だ。
最初に驚いたのは「うどん」だった。
大阪できつねうどんを初めて食べた時の感動は、今でもよく覚えている。
関東のうどんは醤油ベースで黒いのだが、
大阪で食べたきつねうどんは甘い「おあげさん」に黄金色のスープ、
一見薄味かと思いきや出汁がしっかりきいていて、それはそれは、おいしかった。
天津飯にしてもそうだ。関東の天津飯はケチャップ風味だが、関西ではしょう油または塩の餡だ。
同じ日本でも地域によってここまで違うのは驚きだった。
他にも、大阪と言えばお好み焼きだが、
初めて大阪でお好み焼きを食べて、今まで「本当のお好み焼き」を食べたことがなかったことを知った。
と言うのも、当時は横浜でお好み焼き屋さんなるものを見たことがなく、
お店で食べたこともなかったのだが、
縁日では食べたことはあったので、名前や存在は知っていた。
縁日で食べた「お好み焼き」と言われるそれは、
卵と小麦粉を水で溶いたものを鉄板にクレープのように薄く広げ、
その上にキャベツを散らし、ソースをかけ、砕いたポテトチップスをどっさり入れ、
クルクルと巻いて食べるものだった。
それ、おかず系のクレープやないかい!
と突っ込みたくもなるが、
それこそがお好み焼きと思っていた。
それが、大阪に来て本場の「お好み焼き」を食べた時、
今まで食べていたものは一体なんだったのかと思った。(おかず系のクレープやろ)
こんなにも生地が厚く、具がたっぷりで、ふわふわしたおいしいものだったなんて。
ただ、マヨネーズをかけることだけはどうしても抵抗があった。
絶対合わない!と、かたくなに拒絶した。
けれど、それは間違いだった。
マヨネーズをかけたお好み焼きほど最強なものはない。
冷やし中華にマヨネーズをかける人もいる。
これも最初は拒否していたが、食べてみるとこれが意外にもおいしいのだ。
私の大阪でのソウルフードは、やはり最初に感動した「きつねうどん」だろう。
でも、大阪には他にも冷やしあめ、冷やしコーヒー、イカ焼きなど、
大阪独自のおいしい食べ物がたくさんある。
総じて、関西人は美味しいものへの探究心が強いのだと思う。
決めつけないでとにかくやってみる。
悩む時間がもったいない。
「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」
という名言を残したサントリー創業者である鳥居信次郎のように、
何事にもチャレンジする商人気質が根付いているのかもしれない。
そしてそれは、今の私の仕事にも多少つながっている気がする。
私のおいしいものへの探究心は相当だと思う。
これとこれを組み合わせたら美味しいのでは?
絶対合わなそうなこれをかけたらどうなる?
その好奇心は次男に受け継がれている。
大阪に来なければ、自分自身この食に対しての探究心に気付くこともなく、
今こうして食に携わる仕事をさせて頂くこともなかったかもしれない。
大阪に来た当初は戸惑いも多かったが、
今となっては親には感謝しかない。
ちなみに、当時はまだ「恵方巻き」が全国的ではなかったので、
そんな風習をしらなかった私は、
節分の翌日のクラスメイトほとんどのお弁当に「海苔巻き」が入っていたのを見て
(今日って海苔巻きを持って来ないといけない日だったのか!?)
と内心焦ってドキドキしたのも(どんな日やねん)
今となってはいい思い出だ。
よみファクッキング
たっきーママのオリジナルレシピ
カボチャと蓮根の甘酢炒め
さつまいものバター醤油
【プロフィール】
たっきーママ(奥田和美さん)
料理研究家、お弁当プランナー
「料理レシピ本大賞in Japan ‘2016」入賞。
「レシピブログアワード」お弁当部門3年連続グランプリ受賞、レジェンド入り。
フードアナリスト、フードコーディネーターとしてテレビ、雑誌、広告の他、企業のレシピ開発などで活動。
著書では発行部数11万部超えの「朝すぐ!弁当」(扶桑社)他、累計118万部突破。
オフィシャルブログ
『たっきーママ@Happy Kitchen』
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