奥田和美(たっきーママ)さん連載コラム「母の日の思い出」
- 読売ファミリー
- 2022/05/10料理&コラム
よく「女性は記念日を覚えているが、男性は忘れがち」というが、わが家は逆だ。
私は記念日にほとんど興味がなく、夫と何月何日に出会ったか、いつ付き合い始めたか、の記憶が曖昧だ。(最低か)
この辺りは全て夫が記憶しているので特に問題はないし、さすがに私も結婚記念日や入籍記念日は覚えている。
でも実のところそれも忘れがちで、入籍記念日に夫に「今日はなんの日でしょうか!」と聞かれて「不燃ゴミの日?」と言って悲しませたこともある。(再び最低か)
それでも夫は誕生日以外でもことあるごとにプレゼントをくれるマメな人だ。
これはいつだったかのホワイトデーにくれたマグカップ。
バレンタインのチョコあげてなかったのにww
けれど、私が忘れがちなのは記念日であり、家族それぞれの誕生日だけは特別な思いがある。
夫が生まれてくれた日、子どもたちが生まれてくれた日。生まれてくること自体が奇跡なのだと、双子を流産した経験で心の底から思った。
家族が元気に生きてさえいてくれればそれでいい。
そんな私にとって誰かが決めた母の日は特に思い入れがあるわけではなかった。感謝して欲しくて、見返りを求めて子育てをしているわけではないのだから。
それでも子供が小さい頃は幼稚園で書いた絵や手紙(先生の字、又は印刷で笑)をもらうと嬉しかった。
子供が大きくなるにつれ、学校でそれを強要されることもなくなり、母の日はスルーとなってしまったが、勝手に期待しては裏切られるような気持ちになるのが嫌なので、いつしか期待をすることもなくなった。
なくなったはずだった。
あれは数年前の母の日、夫が急に「今日はみんなでカレーを作るから何も作らなくていいよ、買い物もみんなで行って来るから」と言い出した。
私はその言葉と気持ちが嬉しくて、期待していないと言いながら今年は最高の母の日だなと思っていた。
しかし、昼寝をし始めた夫が夕方になっても起きて来ない。
カレーを作るなら材料を買いに行かないといけないのに、どんどん時間が過ぎて行く。
イライラしながらも起きるのを待っていたが、いっこうに起きて来ないどころかもう18時になろうとしていた。
さすがにそろそろ起こさねばと、夫に声をかけた。
「カレー作るなら買い物行かないとだけど、どうするの?」
と。
すると夫は信じられないことに
「・・・もう時間ないしデリバリーにせーへん?」
と言うではないか。
期待させといてそれはなくない? なら最初からあんなことを言わなければいい。
「は? カレー作るって言うたやん」
と若干キレ気味で言うと
「はいはい、買いに行けばいいんやろ」
「そんな気持ちで作ってもらっても嬉しくない!」
「じゃあどうして欲しいねん」
「どうして欲しいか、じゃなくて、どうしてあげたいか、じゃないの?!」
無性に腹が立ち、そのまま車に乗り、家出をした。(母の日のカレーごときで家出)
行くあてがなく、よく行くスーパーの駐車場で自分の気持ちが落ち着くまで時間を潰した。頭の中でぐるぐると色んなことを考えた。
だから期待なんてするもんじゃない。いや、期待してなかったのに期待させたのは夫だ。私は悪くない。
プチ家出中に夫から何度も電話がかかって来たがもちろん無視した。でも、ずっとここにいるわけにもいかない。そんな時、夫から「カレーみんなで作ったから帰って来て」とLINEがあった。
もうあれから2時間も経っている。おなかも減った。帰るか・・・(結局カレーで釣られる)
家に帰ると、子どもたちが待ち構えていたかのように「母の日、いつもありがとう!」と一輪のカーネーションをプレゼントされた。そして食卓にはカレーが並んでいた。
恐らく、車を奪われた男たち3人は仕方なく徒歩で(多分競歩で)スーパーへ行き、スーパーの向いの花屋でカーネーションを慌てて買ったのだろう。
私が家出をしなければきっとしなかったであろうこの行動でも、やっぱり嬉しいものだった。
期待していないといいながらどこかで「もしかしたら」と期待してしまっていたかもしれない面倒くさい人間であることを、自分で初めて知った日だった。
それ以降、わが家の男連中は母の日にはとても敏感になった。(かわいそうに笑)
そんな今年も「今日は家のこと何もしなくていいからな!」と夫に言われていたので本当に家のことは何もせずにいたら、結局、誰も何もしなかったので家はぐちゃぐちゃになっただけだった。(お前もせーへんのかい)
「夜ご飯も何も作らなくていいからな!」と言われたので、あの時の二の舞になるのもこれ以上キッチンを汚されるのも嫌だったので、ピザのデリバリーをリクエストした。
わが家は食べ盛り男子が2人、そして夫もよく食べるので、ピザLサイズ2枚にパスタ2皿、サイドにポテトやらなんやらと結構頼んだが、みんなが気持ちいいくらいにガンガン食べているのを見ているだけでも嬉しかった。
しかし、「お母さんもいっぱい食べな!」と勧めてくれたそのピザ、結局お金を払ったのは私ですから!(笑)
とは言え、何でもない日に言葉や形で感謝の気持ちを表してくれる夫や子供たちに対して感謝をしなければいけないのは私の方かもしれない。
そう思うと、ピザくらい安いものだな。(まだ言う笑)
よみファクッキング
たっきーママのオリジナルレシピ
【プロフィール】
たっきーママ(奥田和美さん)
料理研究家、お弁当プランナー
「料理レシピ本大賞in Japan ‘2016」入賞。
「レシピブログアワード」お弁当部門3年連続グランプリ受賞、レジェンド入り。
フードアナリスト、フードコーディネーターとしてテレビ、雑誌、広告の他、企業のレシピ開発などで活動。
著書では発行部数11万部超えの「朝すぐ!弁当」(扶桑社)他、累計118万部突破。
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『たっきーママ@Happy Kitchen』
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