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山本ゆりさん連載コラム 物が捨てられない話2 捨てられない「本、そして人からもらったもの」編

前回に引き続き、私がなかなか捨てられないもの。それは本だ。

「2年読んでいない本はこの先も読まないから処分せよ」みたいなアドバイスをよく見るが、それでいくと本棚ごと捨てられるぐらい、ほとんど読んでいない。でも、服などと違って5年10年読まなくてもふと読み返したくなることは往々にしてある。5年後、10年後はまた前とは全然違った感想になるのが本の醍醐味(だいごみ)ではないか。矢沢あいさんの漫画「天使なんかじゃない」なんて数年ごしに読むと、翠に、マキちゃんに、志乃ちゃん、マミリン、ケンちゃん、晃、晃のお母さん……など感情移入する人が変わって毎度ボロ泣きするし
…っていうような確実にまた読み返すモノは迷わず置いていいとして、私の場合、二度と読まないであろう本さえ捨てられなかったりするのだ。

コレクターのように集めることが趣味ではないし、本がたくさん並んでいる状態に満足しているわけではない。むしろ邪魔だ。入りきらずに並べた本がさらに積み重なっていくのもゴチャゴチャして落ち着かない。

でも、一度は愛した本。読まんくせに、いざもう二度と読めないと思うと恋しくなり、思いとどまってしまうのだ。整理整頓マスターの方々はいう。「読みたくなったらその時にまた買えばいい」「本当に必要ならもう一度出会う」……ほんまそれ。実際、なかったらなかったで気にしない、捨てても買ってまでは読まないであろう本は多い。捨てたら存在を二度と思い出さないであろう本もある。

…ってなると、逆に捨てられへんねんけど。今生(こんじょう)の別れやん。むしろ絶対にまた読み返したくなるとわかっている本のほうが捨てられるわ。(なんのために)

たとえ今生の別れやとしても存在自体を忘れてしまってんねんから何一つ痛手じゃないやろって話やねんけど、なんやろ……かつてドラえもんと仲良くしていた記憶を消されたくないみたいな感じというか。え、何言ってるんやろこの人。はよ捨てよ。今すぐ捨てるわ。

しかし、本以上に捨てられないもの……それは人にもらったものだ。

プレゼントは嬉(うれ)しい。仮に趣味が合わなくても、一度も使わなくても、自分のために割いてくれた時間と気持ちがすごく嬉しい。なのでどうしても捨てられない。ちょっとしたノベルティーとかお古とかなら大丈夫なのだが、プレゼントとしてもらったものは、使うか汚れるか、何か支障がないと捨ててはいけないような気がしてしまう。持っていることが誠意みたいに思ってしまうのだ。

プレゼントはもらった時点で役割を果たしている、と聞いたことがある。笑顔で受け取り、御礼を伝えたらそこで完結しているから、気持ちだけを大切に受け取り、モノだけ捨てれば良い、と。でも、気持ちだけもらってモノだけ捨てる、って難しくない? そこピッタリくっついていない? モノ捨てた時点で気持ちも多少持っていかれるやろ。

いざ捨てようと袋に入れても、ああ……これ、私がめっちゃ喜ぶと思って悩んで買ってくれたんやろな……とか勝手に想像して、もしそれがゴミ箱に捨てられていると知ったら……と思うと元に戻してしまう。しかも「ありがとう! めっちゃ嬉しい!!」って笑顔で受け取って、バイバイした瞬間気持ちだけもらってゴミ袋に入れていたらちょっと怖いやん。血も涙もない人みたいな。たとえ趣味とは違っても、とりあえず数か月は置いておこうみたいな変なマイルールをもうけてしまうわ。

使わずただただしまっておく、果たしてそれが大切にしているといえますか?? と言われたら、全然してない。むしろ。私がプレゼントあげた側ならいっそ捨ててくれと思いそうやわ。でも、自ら物を捨てるのとホコリかぶってでも持っているのやったら、どちらかというと後者のほうがマシな気がしてしまう。数年後「私があげたあの置物、家のどこにもないんですけどぉーーー」と責められたりはしないし、逆に「あの置物まだ持ってくれてたん!?」と喜ばれることもないねんけど、なんなんですかね。前世でなんかあったんですかね。昔まったく知らない子ども(初対面)に「コレ大切に持っててね~」と気まぐれに渡された公園の石ころさえ数週間捨てられずに持っていたぐらい、貰(もら)い物を捨てるのって躊躇(ちゅうちょ)するわ。(これはさすがに「いや絶対覚えてへんやろ!」と我に返ってポイしたけど)

おそらく私はモノに執着しているわけではない。人からもらったものは大切にするという考えや、人から貰ったものはとっておく自分のルールに執着しているのだ。でも頂いたものであれ、明らかに汚れたり使い古したりしたら納得して捨てられるから、ゴミじゃないものをゴミにする、ということが根本的にダメなのだろう。MOTTAINAI精神が強すぎて明らかに弊害になっている。これを解決するには、そう

すべてを汚すしかない…!

とか、訳わからん思考になっていくわ。いや、ほんとに片付けとか断捨離ってその人の人生を映しますね。迷っているものをほんとに手放してみたらどうなるのか。スッキリするのかやはり後悔するのか、今年こそは試してみたい。

 

山本ゆりさんに用意していただいた
オリジナル最新レシピを紹介
よみファ クッキング

長芋と豚バラのチヂミ

山本ゆり プロフィール
料理コラムニスト。大阪生まれ&在住。著書「syunkonカフェごはん」シリーズ(宝島社刊)など著書は累計約700万部。最新刊「syunkonカフェごはん7 この材料とこの手間で「うそやん」というほどおいしいレシピ」ほか、「syunkonカフェ どこにでもある素材でだれでもできるレシピを一冊にまとめた「作る気になる」本」(扶桑社刊)など。新刊エッセイ「syunkon日記 おしゃべりな人見知り」(扶桑社)が発売中。
Twitter:syunkon0507
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ブログ「含み笑いのカフェごはん『syunkon』

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