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取材記者の旬のトピック

海峡沿いの気候が生んだトップブランド ✽ なると金時「里むすめ」/ 鳴門市

【 徳島県版 】旬を訪ねて(鳴門市)

  海峡沿いの気候が生んだトップブランド

なると金時「里むすめ」 鳴門市

砂地と潮風に育まれたなると金時「里むすめ」(写真提供/JA里浦)

ホクホクとした食感と、栗のような甘さ——
県特産のサツマイモ「なると金時」の中でもトップブランドといわれる「里むすめ」は、主に海浜地帯で栽培される。
海砂の砂地畑で栽培する海抜0mの代表産地、鳴門市里浦町を訪ねた。

ミネラル豊富 海砂の畑
「なると金時」は1978年に徳島県農業試験場(現・徳島県立農林水産総合技術支援センター)が、高系14号というサツマイモの品種からの選抜育種に成功したことに始まる。鳴門市東南部の吉野川河口域の砂地で4月から栽培され、7〜11月に収穫。同市里浦町はその代表的産地で、「里むすめ」は98年に商標登録された。町内には255軒の生産農家があり、約500人が計約330万㎡の畑で年間7000〜8000tの「里むすめ」を生産。半数は京都を中心に関西圏に出荷する。

JA里浦の販売課長・村上東男(はるお)さんの案内で鳴門海峡沿いの畑を訪ねると、見渡す限り青々とした「里むすめ」の葉が広がっていた。「この一帯は海抜0mで、畑の土は海砂です」と村上さん。砂に触るとサラサラできめが細かい。この砂が適度な水はけと保水性を保ち、温暖で乾燥した気候と相まって栽培に最適な環境を満たしているという。「この砂に含まれる豊富なミネラルと潮風が、品のある甘味と美しい色、ツヤを育んでいます」と説明する。

例年2月に土を作り、畝を立てるなど畑を整える一方で、育苗を開始。4月に約30㎝に切った苗を畑に植え、7月から収穫が始まる。栽培農家で同JA参事の中條啓司さんは「畑に苗を植え付ける頃が一番肝心」と強調。ふんわりとした畝を立て、苗を植え付けた後は根が付くまで覆いをして、土の温度や水分、追肥に気を配り、たびたび畑を見回って育ち具合を観察するという。

海岸沿いの畑で収穫される「里むすめ」

熟成すると甘さに深みが
「『里むすめ』の旬は2回あるんです。1回目は収穫時期で、2回目は収穫後に貯蔵庫で寝かせて1〜2か月たった頃」と中條さん。貯蔵することで熟成し、甘さに深みが加わるという。「里むすめ」は幅広い料理に使えて、冷めてもおいしいのが特長。中條さんは「短冊状に切り素揚げにして、塩をかけて食べるとうまいですよ。炊き込みご飯もたまりません」と自身の好きな調理法を教えてくれた。

JA里浦では加工品として「里むすめコロッケ」や「冷やし焼き芋」を開発し、好評だという。市内にある道の駅「くるくるなると」には、生鮮の「里むすめ」を始め、なると金時を使ったあんパン、デニッシュ、パンケーキなどのスイーツがズラリ。揚げたての「里むすめコロッケ」を食べると、栗のように甘く、ホクホクしておいしかった!(エリアライター/黒田仁朗

なると金時のオブジェがシンボルの道の駅「くるくるなると」

JA里浦が開発した「冷やし焼き芋」(写真提供/JA里浦)

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