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香川 ✽ 新しい石の魅力を届けたい ✽ 蒼島(あおいしま)・高松市

【 香川県版 】おじゃましまーす!

  新しい石の魅力を届けたい

蒼島(あおいしま)・高松市

庵治石を使った実用的な商品が並ぶ展示室

高松市牟礼町は「花崗(かこう)岩のダイヤモンド」と呼ばれる最高級石材「庵治(あじ)石」の産地として知られる。
庵治石を使った新しいクラフトやインテリアを世に送り出す石材加工業者が「蒼島」だ。
石材工芸の新たなフィールドを開拓する同社を訪ねた。

実用的でおしゃれなデザイン
同社の展示場には「AJI PROJECT(アジ プロジェクト)」と名付けられた自社ブランド商品が並ぶ。岩石を真っ二つに割ったようなブックエンドの「ロックエンド」や石の台座に丸い鏡が付き、角度が自在に変えられる「ミラー」など、どれも実用的でデザインがおしゃれ。

周辺は石の採掘から研磨、彫刻などを行う職人が生計を立て、墓石を軸とした一大産地としてにぎわい、世界的な彫刻家、イサム・ノグチや流政之(ながれまさゆき)がアトリエを構えていた。ところが、海外から安価な石材を使った墓石が輸入されるようになると、たちまち衰退の一途をたどっていったという。

石を使った雑貨など提案
社長の二宮力さんは、「私が二宮石材を創業した約30年前には、この地域には約500社の石材業者がありましたが、現在は170社ほどに減り、多くは一人親方です」と嘆く。二宮さんは、墓石で培った高い技術をほかの商品に転用し、墓石以外の市場に打って出ようと2021年に同社を創業。発信力のあるプロダクトデザイナーのイトウ・ケンジ氏をディレクターに起用し、新ブランド「AJI PROJECT」を発足した。石の端材を使い、これまでにない雑貨やインテリアなどの製造販売を開始。加工現場の見学では、参加者が採掘場で職人と選んだ石を使ったブックエンドづくりや、描いた絵や文字をプレートに彫る体験も取り入れた。

写真右/「AJI PROJECT」のヒット商品「ロックエンド」
写真左/台が石なので水回りでも使えると好評の「ミラー」

昨年11月には「OMORI(重り)」をテーマに国内外のプロダクトデザイナーやアーティスト10人のアイデアをもとに製作したコレクションを発表。デザイン、アート、アパレルなど様々な業界から多くの人が訪れ、出品した半数が初日で売れたという。「石がいろいろな人と場をつなげてくれています」と二宮さんはほほ笑む。

庵治石を使った石材加工の歴史は約千年といわれる。市場は建物の基礎や灯籠(とうろう)、墓石など時代とともに変遷してきた。二宮さんは「漆器を始め香川県は工芸に長けた歴史があります。石材工芸の私たちが頑張れば、他の工芸業界も盛り上がるはず。やがて志を持った若い職人が移り住み、地域活性化につながるのでは」とおだやかに語った。(エリアライター/黒田仁朗 

昨年11月に発表したドアストッパーを手にする二宮さん

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