【 広島県版 】頑張ってま〜す!
看板商品は酸味まろやか ユズのケーキ
川根柚子協同組合/安芸高田市
安芸高田市の中心部から北へ約20km。
同市高宮町の川根地区は、島根県との県境にある集落。
山深い場所で、質の高い無農薬のユズを栽培し、町おこしをしている「川根柚子協同組合」が精力的に活動中だ。
同組合が作っているのは看板商品のバターケーキ「柚子ヴぁたーケーキ。」などのスイーツを始め、ドリンク、ポン酢醤油(しょうゆ)に代表される調味料類など12種。昨年は約5500万円を売り上げ、過去最高を記録した。主な販売場所は、県内の百貨店やスーパー、道の駅や同組合のネットショップ。関東や関西へ期間限定で出店することもある。昨年は東京の日本橋三越本店でも販売して好評を得た。SNSを活用したことで、売り上げが劇的に伸びた。総務担当のバラオナ昌美さんは「多くの人に商品の良さを知ってもらえるようになりました」と笑顔で話す。
◆ 6次産業化を推進
川根地区は、中国山地に囲まれた集落で朝晩と日中の寒暖差が大きい。近くを江の川が流れ、平らな土地が少ない上、地質は岩盤や粘土層が多く根菜類は育ちにくい。「特別な産業がなく、一家に1本植えていたユズくらいしか売るものがなかったのが実情です」と企画営業部長の熊高さん。しかし、そのユズは皮が厚くて苦みが少なく、酸味がまろやかという大きな特長を持っていた。
同地区ではこのユズを、無農薬で生産して売り出そうと1981年に同組合の前身「川根柚子生産振興協議会」を発足。当初、ユズみそなどの加工品はあったものの、主力商品の青果は年によって生産量が不安定で、市場価格の上下に翻弄(ほんろう)されて苦戦。ユズの高付加価値化と6次産業化(生産者が加工・流通・販売活動等まで行う取り組み)をさらに進める必要に迫られ、2010年頃に「川根柚子」をブランド化して商品開発に力を注いだ。組織は12年に「川根柚子協同組合」として法人化。15年に「柚子ヴぁたーケーキ。」を発売し、ヒット商品となった。商品には、無農薬で育てたユズの果汁や皮に加え、他の原料も全て国産を使い、保存料などは使わない。製造主任の熊高真奈美さんは、「身体に優しく安心して食べられる物を作りたい」とこだわりを話す。
◆ 川根の心意気 世界へ発信
現在の組合員は58人。過疎・高齢化もあり発足当時からは半減し、平均年齢は70歳を超えた。一方で、400本ほどから始まったユズの木は、毎年約200本ずつ増え続け、現在約3500本。昨年の収量は約45tに上った。組合長の熊高昌三さんは「雇用を増やし、地域を牽引(けんいん)できるよう力を合わせていきたい。東京の日本橋で認知されたので、次の目標はショッピングストリートとして名高いアメリカのニューヨーク5番街。『川根柚子』ならではの商品開発に取り組み、誇り高い川根の心意気を、世界に向けて発信していきたい」と意気込んでいた。(エリアライター/井東由里子)