120年前のチャレンジ精神 復元バスと共に ✽ かよこバス / 広島市
- 読売ライフ
- 2024/11/15中四国情報
【 広島県版 】いいね👍(広島市)
120年前のチャレンジ精神 復元バスと共に
かよこバス / 広島市
復元された「かよこバス」(写真提供/横川商店街振興組合)
◆ 1世紀前の姿 忠実に復元
日本のバス事業は1903年9月に京都市で6人乗りの車両で運行したのが始まりといわれる。そんな中、広島市では05年2月5日に乗り合いバスが誕生していた。
当時のバスは12人乗りで、現在の同市西区横川から安佐北区可部の約15㎞を運行。開通初日に盛大なセレモニーが行われた記録が残っている。時は明治の終わりごろで、車の初輸入が1898年、初の国産車製造が1904年というから、まさに車の黎明(れいめい)期だ。バスの車両は、駆動部分として輸入車の改造を東京の会社に依頼し、車体を名古屋の馬車製造会社に発注した。しかし車体はケヤキ製で重量が1t以上あり、当時の脆弱(ぜいじゃく)なタイヤでは支えきれず、9か月ほどで営業を停止したと伝わっている。
当時のバスを詳細に調べたのが横川商店街振興組合の理事長・村上正さんだった。「地方都市の広島では革新的な出来事。約100年も昔のチャレンジ精神に感動した」と振り返る。賛同した横川地区の有志らが「当時のバスを復元しよう」と2002年8月に「レトロバス復元の会」を発足。文献や写真でバスの色やサイズなど細部を調べ、製作費を集め、協力者を募った。
製作現場の指揮を執ったのは現在、広島市立大学芸術学部長を務める吉田幸弘さん。エンジンは軽トラ、車台には軽トラックとマツダのバン「ボンゴ」の2台分を使用、車体には入手しやすくケヤキに近い質感のタモを採用した。吉田さんは「約100年前のバスを限りなく忠実に復元したい、その一念だった」と話す。
1905年のバスの写真(柴彰彦氏所蔵/広島市公文書館提供)
開業時の様子を伝えるモニュメント(JR横川駅構内)
◆ お披露目パレードから20年
バスは「レトロバス復元の会」発足から約1年半後の04年3月に完成。材料費約700万円、総勢200人以上が関わった大プロジェクトになっていた。復元されたバスは開業当時に走った可部〜横川間の頭文字をつなげて「かよこバス」と命名され、同年3月28日のお披露目イベントでは、横川から可部までを約4時間かけてパレードした。復元されたレトロバスを一目見ようと多くの観客が集まり、テレビで生中継もされた。村上さんは「たくさんの人が関わり作り上げたバスが大歓迎を受けて感激した」と振り返る。
かよこバスのお披露目セレモニー(04年3月 写真提供/横川商店街振興組合)
現在、かよこバスはJR横川駅構内に展示されている。今年春には復元から20年を記念して、「20thかよこバス祭り」が行われた。かよこバス復元の勢いは、約120年前のチャレンジ精神にも通じる熱を持っていた。(エリアライター/井東由里子)
かよこバス復元当時の思いを語る村上さん