徳島 ✽ 傾斜地農法 集落の活性化に ✽ 家賀(けか)再生プロジェクト(つるぎ町)
- 読売ライフ
- 2025/04/16中四国情報
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傾斜地農法 集落の活性化に
家賀(けか)再生プロジェクト(つるぎ町)
標高150~650m、20~30度の斜面に家や畑がある家賀集落
県西部の「にし阿波地域」(三好市・美馬市・東みよし町・つるぎ町)では、斜面地を傾斜のまま農地として活用する昔ながらの傾斜地農法が長年継承されてきた。
つるぎ町の集落「家賀」では、2018年に傾斜地農法が「世界農業遺産」に認定されたのをきっかけに、同年、地域住民を中心とする団体「家賀再生プロジェクト」が発足。
地元の農業や生活文化を体験してもらおうと4月から宿泊や体験メニューが始まる。
◆ 「世界農業遺産」体験できる
体験拠点施設「家賀乃里 古城(こじょう)」は標高約500mにあり、波のように連なる山々が遠望できる。同プロジェクト代表の栃谷京子さん(75)の案内でフキノトウを摘み、江戸時代の茅葺(かやぶ)き家屋の古城で昼食。囲炉裏端には山菜や野菜の天ぷら、そば米汁、栗の渋皮煮や干し柿などがずらりと並ぶ。世界農業遺産の畑や野辺で育ったオーガニックな野菜や山菜は甘くて香り高い。
「家賀乃里 古城」の縁側で話す栃谷さん(左)と出尾さん
集落全体は石垣でできた砦(とりで)のようで、畑も家も石垣の上にある。ガイドを務める石田修さん(73)は「急傾斜による土の流出を防ぐため、大きな平たい石の上に小さな石を積み上げています」と説明する。畑には茅が生い茂る「茅場」があり、茅を刈って積み上げた「コエグロ」が点在する。「茅を畑に敷き詰めることで、水をやらなくても野菜が育つほど保水性が高められる上、微生物の温床となるので土が肥えます。しかも連作障害を起こしません」と石田さん。急傾斜の集落に築かれた石垣と畑、茅が装置のように働き、環境に負荷をかけない持続性の高い農業が営まれている。
家賀集落を案内する石田さん
◆ 今月から農家民泊も
石垣は等高線上に延び、帯のように美しい。家屋周辺の石垣の前には物干し場が設置され、太陽や石垣から出る遠赤外線と風を利用して、干し芋や干し大根などを作る。コーディネーターの出尾宏二さん(74)は「うまい保存食ができるんです」と教えてくれた。同プロジェクトのメンバーは10人。2年前から中高生の修学旅行を受け入れているほか、竹筒に入れて乳酸発酵させた「竹筒晩茶」や自家栽培した藍の粉が入った「藍晩茶」などを開発。4月から一般客を対象に農家民泊やガイド付き散策&昼食、畑仕事など家賀の生活体験も始める。栃谷さんは「いろいろな人との出会いが楽しい。家賀ファンを広め、一緒に家賀の生活文化を楽しみ守っていきたい」とほほ笑む。(エリアライター/黒田仁朗)
昼食は世界農業遺産の土地で育った野菜などを使った郷土料理
家賀乃里 古城
◆つるぎ町貞光字家賀道上474
素泊まり5000円、夕食2500円、朝食1500円、ガイド付き散策&昼食5000円。
※要予約
問い合わせは栃谷さん
☎090・5144・4896