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岡山 ✽〝本のソムリエ〟で出合う 郷土の一冊 ✽ 吉備路文学館(岡山市)

【 岡山県版 】いいね

  〝本のソムリエ〟で出合う 郷土の一冊

吉備路文学館(岡山市)

展示を通して、新たな本との出合いの機会作りをする友森さん

内田百閒(ひゃっけん)や薄田泣菫(すすきだきゅうきん)からベストセラー作家の横溝正史や小川洋子、あさのあつこまで、岡山県や広島県東部にゆかりのある文人は多い。
そんな郷土の作家を紹介する「吉備路文学館」(岡山市)は、新たに本と出合うきっかけの宝庫だ。

地元企業が紹介する文学者
企業が運営する美術館は全国各地にあるが、地元企業が郷土ゆかりの文学者を一堂に集めて紹介する「文学館」は珍しい。その代表格が「吉備路文学館」だ。
同館は、中国銀行(本社・岡山市)が創立50年を記念して1986年に地域貢献を目的に設立。吉備路(岡山県と広島県東部)出身者やゆかりの近現代の文学者約150人の功績にスポットを当てている。

小説や童話、詩、短歌、外国文学などの分野に分けられた文人名一覧から知っている作家を数えたところ28人。その中に以前、愛読していた備前市出身の柴田錬三郎の名もあり、痛快な時代小説を再び読みたくなった。

吉備路文学館のシンボルツリー「鬱金桜(うこんざくら)」。4月上旬から咲き始め、花びらが薄黄緑色からピンクに変わっていく

コレクター提供の資料も
案内してくれた学芸員の友森陽香さん(36)は、「来館者の中には普段、本を読まないという方も。私たちは特別展や企画展を通して文学に興味を持ってもらえる機会作りをしているので、幅広い層の方に来ていただけるのは大歓迎です!」とにっこり。実際、作家展の場合はファンが大半だが、猫や旅などテーマでくくった展示はそのテーマに興味のある人が足を運ぶという。

中身の濃い展示内容は学芸員の地道な調査研究もさることながら、充実した収蔵資料の存在が大きい。約5万点の資料の中には、初版本や雑誌、手書き原稿、万年筆や筆などの愛用品、洋服なども。作家やその家族、出版社、コレクターからの提供も少なくない。

大正から昭和初めに活躍した文学者の資料が最も多く、友森さんは見どころの一つに「直筆」を挙げる。「筆跡から人となりが感じられます。文字入力が当たり前の今、より貴重です」。「直筆」の中には訂正を指示する朱入れも含まれる。小説家で童話作家の坪田譲治の資料には、師匠から朱入れされた原稿があり、作家の苦労が分かり、親近感がわく。

「新収蔵品展」で初公開される坪田譲治の万年筆

最後に友森さんが推す文学者を聞くと、「木山捷平(しょうへい)」と言う。「なかでも一編が短く、気軽に読める随筆集『角帯兵児帯(かくおびへこおび)』に収録された〈私の好きな方言〉と〈笠岡随想〉は郷里岡山のことに触れられていますので、ぜひ」と薦める。個人的にうれしかったのは、決して手に取らなかったであろう一冊と出合えたこと。文学館が〝本のソムリエ〟に見えてきた。

友森さんが薦める、笠岡市出身の作家・木山捷平の随筆作品『角帯兵児帯』

223日~68日は同館が新たに収集した資料を展示する「新収蔵品展」を開催する。(エリアライター/福田ひろみ

吉備路文学館

930分~17
月曜休館(祝日は開館、祝日の翌日休館)
入館料は一般400円、高大生300円、小中生200
岡山市北区南方3-5-35
086-223-7411

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