高知 ✽ 春を感じる芳醇(ほうじゅん)な香り 土佐文旦・宿毛市
- 読売ライフ
- 2025/02/17中四国情報
【 高知県版 】旬を訪ねて
春を感じる芳醇な香り
土佐文旦(宿毛市)
手のひらより大きな土佐文旦
高知県発祥のかんきつで、早春の味覚を代表する「土佐文旦」。2023年の年間生産量は1万1437tで、全国シェアの約95%を占める。主力産地の一つ、宿毛市の文旦は暖かい潮風と陽光に育まれ、芳醇な香りを放つ。
◆ たわわに実る大きな果実
宿毛市は土佐市、四万十市と並ぶ主力産地で、約50軒の生産農家が文旦を栽培している。農園は山のすそ野の防風林の中にある。濃緑色の葉をつけた果樹にソフトボールを一回り大きくしたような黄色い実がたわわにぶら下がっている。一般的には、霜が降りる前の12月に収穫し、土に埋めた後に出荷されるが、宿毛市内では露地栽培のまま収穫する。JA高知県幡西営農センター長の川田尚宏さんは、「黒潮が流れ込む宿毛湾からの潮風が暖かく、日当たりの良い農園に霜が降りないからです」と説明する。収穫は年明けから2月にかけて行われ、2週間から1か月間ほど倉庫で貯蔵し、酸味を抜いてまろやかな味に調えた後、出荷される。この栽培法が独特の豊かな香りを生むそうで、川田さんは「収穫時は農園全体が文旦の香りに包まれます」と笑顔を見せる。
文旦は5月に授粉、8~9月に幼果の間引きが行われる。「一年で一番大変なのは授粉の時期です」と川田さん。文旦は自家受粉しにくいので、小夏という別のかんきつの花粉を使って人工授粉させる。このため、農園には文旦畑と小夏畑が隣接していて、双方の花が重なって咲く1~2週間が勝負。生産農家は文旦の出荷が終わると5月まで小夏の出荷に追われるという。
潮風を浴びてたわわに実る文旦
◆ 23日 道の駅でマルシェ
文旦は糖度が約10%で甘すぎず、シャキシャキとした食感と香りの高さから、料理への応用も多様だ。2月23日には宿毛市内の道の駅「すくもサニーサイドパーク」で文旦をテーマにしたイベント「すくも文旦サニーサイドマルシェ!」が開催される。同市内のカフェや飲食店が一堂に会して、文旦を使ったピザや焼きそば、スイーツ、ジュースなどを販売するほか、青果の直売やクイズ大会も行われる。
マルシェ名物の「文旦タワー」(写真提供/宿毛市観光協会)
また、宿毛市内の飲食店13店舗では2月23日~4月下旬に「すくも文旦フェア!」も行われ、文旦を使ったチョコレートケーキや塩焼きそば、カレーなど各店舗自慢のメニューが味わえる。 (エリアライター/黒田仁朗)
両イベントの問い合わせは 宿毛市観光協会☎️ 0880-63-0801
宿毛市のケーキ店「アンジェ」のチョコレートケーキ「文旦バッハ」(写真提供/宿毛市観光協会)