土佐の鍛冶職人を目指して ✽ 岩崎嵩司(しゅうじ)さん(四万十町)
- 読売ライフ
- 2025/01/17中四国情報
【 高知県版 】移住バンザイ 東京 ▶︎ 四万十町
土佐の鍛冶職人を目指して
岩崎嵩司さん(四万十町)
包丁を手にする岩崎さん
高知県のブランド米「仁井田米」の田んぼが広がる四万十町で、トントントントンと軽妙な槌(つち)音が響く。
「鍛冶職人になりたい」という一念で、全国をバイクで旅していた岩崎嵩司さん(32)は、2022年11月に東京から同町に移住。
伝統ある土佐打刃物(うちはもの)を鍛造する黒鳥鍛造工場で、鍛冶職人を目指し修業を続けている。
◆ 自分の手 動かすモノ作り
岩崎さんは高校卒業後、都内で半導体の電子基板を作る工場に就職。10年勤めた頃「このまま管理職になって組織の中で働くより、自分の手を動かしてモノを作りたいと思った」と振り返る。たまたま多種多様な刃物製品が載ったチラシを見て、「こんなにいろいろなものが作れたら」と心弾んだことが鍛冶職人を目指した動機だった。鍛冶屋を探して全国各地をバイクでめぐり、高知を訪れた時に黒鳥鍛造工場に飛び込んだ。「突然工場を訪ね、弟子入りをお願いしたにもかかわらず、師匠は二つ返事で受け入れてくれました」と照れ笑いする。
黒鳥鍛造工場は明治の初めから150年余りにわたって、林業用の刃物を中心に、農業用、狩猟用、家庭用など多種多様な刃物の製造·販売·修理を一貫して行っている。現在は包丁を中心に時代のニーズに合った刃物を作り続けている。6代目経営者で師匠の梶原弘資さん(45)は、全く経験のない岩崎さんに一つ一つ技術を指導した。岩崎さんが最初に手掛けたのは田畑で土をすく「股グワ(備中グワ)」だった。
包丁を作る岩崎さん
◆ 使う人と一緒に作るいいモノ
「オーダーに応じて刃物を作り、実際に使った時に良しあしがわかります。作る人と使う人の距離が近いので、使った人の声を聞いて、改善や工夫を重ね、一緒にいいモノを作っていく感じです」と岩崎さん。いいものができたと自信をもって納品しても、実際に使った人の手応えはそれほどでもないこともあるそうで、「どうしてうまくいかなかったのかを考えるのが、とても楽しい」とモノづくりの醍醐(だいご)味を熱く語る。「師匠からダメ出しがなくなるまで修業を続け、将来はどんなオーダーに対しても『やってみます!』と答えられる職人になりたい」と笑顔を見せた。
仕事は8時30分に始まり、18時に終わる。「移住した当初は、空が明るいうちに仕事が終わることが不思議な気持ちでした」と岩崎さん。豊かなオフタイムは地元商工会の活動にいそしむことが多いそう。「この辺りはイベントが盛んなので、いろいろな友達ができて楽しいですよ」と声を弾ませた。(エリアライター/黒田仁朗)
様々な刃物が並ぶ黒鳥鍛造工場の店内
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