沖合に浮かぶ関前諸島の岡村島に家族で移住/今治市・岡村島
- 読売ライフ
- 2024/12/16中四国情報
【 愛媛県版 】移住バンザイ 神戸 ▶︎ 岡村島
あたたかい交流が元気をくれる
今里拓哉さん、マパ・ジェニィさん夫妻(今治市・岡村島)
今里さん一家。左から長女の洋羽さん(11)、和歩くん(9)、ジェニィさん、次女の木花さん(6)、拓哉さん
今治港からフェリーで1時間余りの沖合に浮かぶ関前諸島の岡村島。
広島県呉市から安芸灘諸島の島々を結ぶ「安芸灘とびしま海道」の帰着点で、多島美は瀬戸内海屈指だ。
今里拓哉さん(47)、マパ・ジェニィさん(39)夫妻は2017年に縁もゆかりもなかったこの島に家族で移住してきた。
◆ マニラで出会い 岡村島へ
拓哉さんは少年時代を主にアメリカで暮らし、中学3年の時に帰国。中高を大阪で過ごし、京都の大学卒業後は、教師として大阪の中学・高校で社会を教えた。その後、ネパール留学を経て、名古屋に拠点を置く国際NGOに勤務し、フィリピンへ派遣された。
一方、ジェニィさんはフィリピン・ルソン島南部の島で育ち、フィリピンの国立大学卒業後、国際NGOのスタッフとしてストリートチルドレンの自立支援を行っていた。二人はマニラで出会い、12年に結婚。3年間、神戸市内で国際NGO関連の仕事に携わった。
「途上国はインフラやインターネットが整備されておらず、子供が多い。しかし、未来に対して明るい気持ちを持って、みんなで少しずつ生活を整えています。ところが日本の限界集落では、何から何まで整っているにもかかわらず、人が減って地図からも消えようとしています。国内こそ深刻な状況ではないかと思いました」と拓哉さん。そんな中、過疎などの問題に悩む地域が都市部などからの人材を受け入れる「地域おこし協力隊」の存在を知り、岡村島に行きついた。学生時代に文化人類学を専攻した拓哉さんは「人口500人くらいのコミュニティだと互いの顔が分かって暮らせるようなんです」と説明する。
◆ 家族で楽しむ島の暮らし
拓哉さんは「移住後3年間は、地域おこし協力隊として農作業、ジャム作り、イノシシの解体など地域の人たちの手伝いは何でもしました」と振り返る。現在は農業法人に勤めながら、自身の畑でかんきつ類を無肥料で栽培する。ジェニィさんはフィリピンで取得した社会福祉士の国家資格を生かし、今治市社会福祉協議会関前支部のデイサービスで介護を行う。「高齢者は童心に戻るところがあり、フィリピンで学んだ子供にまつわるスキルが、介護の現場でも生かされています。利用者の方たちからは地元の言葉や料理、漬物の作り方などを教えてもらい、元気をもらっています」と笑顔を弾ませる。
デイサービスで働くジェニィさん(写真右)
島では次女の木花さんも生まれた。「家族も島の暮らしを楽しんでいるようです」と拓哉さん。長男で小学3年の和歩君は「水泳教室と少年野球が楽しい」とにっこり。水泳教室は海で開かれ、野球は隣の島へ通っているという。ジェニィさんは「地域の人たちが家族や親戚のように親しい。私の故郷と同じです」とほほ笑んだ。(エリアライター/黒田仁朗)
ブラッドオレンジの木の手入れをする拓哉さん